ELB(漏電遮断器)は省略できる?|電技解釈第36条の除外条件と「よくある誤解」を検査実例で解説

太陽光発電設備の検査で、業者からこんな回答を受けました。

「制御盤回路に接続しているのはデータ収集装置と監視装置の2機器だけなので、ELB(漏電遮断器)ではなくMCB(配線用遮断器)でよいと考えています」

根拠として挙げられたのは以下の2つです。

  • データ収集装置:収納箱が樹脂製(プラスチック製)だから、電技解釈第36条第1項第1号「簡易接触防護措置」に該当し省略可能
  • 監視装置:トランスの接地抵抗値が1.36Ωだから、第36条第1項第4号「C種またはD種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下」に該当し省略可能

一見それっぽい根拠です。しかし、検査側として「はい、わかりました」とは言えませんでした。この記事では、ELBを省略できる条件と、現場でよくある誤解を実例ベースで解説します。

大原則:ELB設置が「原則」、省略は「例外」

電気設備の技術基準の解釈 第36条では、金属製外箱を有する使用電圧60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、地絡遮断装置(ELB)の設置が原則とされています。

ここで大事なのは論理の順番です。

「省略できる理由を探す」のではなく、「設置が原則。省略するなら各号の条件を満たすことを立証する」が正しい順番です。省略する側に説明責任があります。

ELBを省略できる主な条件(第36条第1項ただし書き)

条件ポイント
第1号機械器具に簡易接触防護措置を施す場合判断対象は充電部への接触防護
第2号乾燥した場所に施設する場合など屋外は基本的に該当しない
第3号二重絶縁構造の機器など電気用品安全法の適用を受けるもの
第4号C種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下その機器の保護接地であることが必要
第5号絶縁変圧器(二次300V以下)で負荷側を非接地とする場合非接地系は地絡電流の帰路がない

※条文の全文・正確な文言は必ず原文を確認してください。

身近な例:なぜコンセント回路にはELBがあって、照明回路にはないのか

分電盤を見ると、コンセント回路にはELBが付いているのに、照明回路はMCBだけということがよくあります。同じ第36条なのに、なぜ扱いが違うのでしょうか。

答えは、省略条件を事前に担保できるかどうかの違いです。

コンセント回路は、何を挿すか・どう使うかが施工時点では分かりません。二重絶縁の機器かもしれませんし、金属外箱の古い機器かもしれない。水気のある場所へ延長コードで引っ張られるかもしれない。つまり、各号の省略条件を満たすことを事前に確認しようがないため、ELBが実質的に必須になります。

一方、照明回路は器具が固定されていて、用途も設置環境も確定しています。天井など手の届かない場所への設置は第1号の「簡易接触防護措置」に該当しますし、乾燥した屋内であれば第2号にも該当します。省略条件を満たすことを施工時点で確認できるため、実務ではELBを省略してMCBのみとすることが多いのです。

このように、第36条は「回路の性質上、省略条件を立証できるか」で判断する条文です。この視点を持ったうえで、冒頭の制御盤の実例を見ていきます。

誤解①「外箱が樹脂製だから省略できる」は成立するか

業者の主張は「収納箱がプラスチックだから簡易接触防護措置に該当する」というものでした。

しかし、第1号の判断対象は外箱の材質ではなく、充電部への接触防護です。

確認すべきなのは次の点です。

  • 工具を使わずに充電部(電圧のかかる端子等)へ容易に触れられないか
  • 扉を開けただけでは充電部に触れられない構造か
  • 端子部が保護カバー等で覆われているか

さらに見落としがちなのが、外箱が樹脂でも内部の機器本体が金属製で接地対象の場合です。その場合は第1号ではなく、接地の状態と第4号の検討が必要になる可能性があります。

「箱がプラスチックだからOK」は、条文の要件を1段飛ばした理屈なのです。

誤解②「接地抵抗が3Ω以下だから省略できる」は成立するか

もう1つの主張は「トランスの接地抵抗値が1.36Ωなので第4号に該当する」というものでした。

数値だけ見れば3Ω以下です。しかし第4号の要件は「機械器具に施されたC種接地工事またはD種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下」です。

つまり確認すべきは以下です。

  • 測定した接地極はどこか(トランスの接地?機器の保護接地?)
  • 対象機器のPE端子(接地端子)がその接地系統に接続されているか
  • その接地はC種なのかD種なのか

「近くのトランスの接地が1.36Ωだった」というだけでは、その機器の保護接地が3Ω以下であることの証明にはなりません。接地系統が別であれば、根拠として成立しないのです。

接地の種類については別記事「接地線(アース)の役割と、A種〜D種までの接地の違いを徹底解説」で詳しく解説しています。

検査側としての指摘の伝え方

こうした場面で「ダメです」とだけ返すと、話が進みません。条文の適用要件を示して、確認を依頼する形にするのがポイントです。実際に送った文面をベースにした例を紹介します。

電気設備の技術基準の解釈第36条では、地絡遮断装置の設置が原則とされており、省略する場合は各号に規定される条件を満足する必要があります。

監視装置について、第4号を適用する根拠として接地抵抗値をご提示いただいておりますが、当該接地抵抗値が機器に施された保護接地(C種またはD種接地工事)の接地抵抗値であること、また測定した接地極と機器の保護接地が同一の接地系統であることをご確認お願いいたします。

また、データ収集装置については、収納箱が樹脂製であることのみをもって判断するものではなく、第1号に規定される簡易接触防護措置に該当することが必要と考えます。機器構造および充電部への接触防護状況についてご確認をお願いいたします。

「原則→適用要件→確認依頼」の順で書くと、感情的な対立にならず、相手も社内・メーカーに確認しやすくなります。

まとめ:ELB省略可否のチェックリスト

  • ELB設置が原則、省略は例外。立証責任は省略する側
  • コンセント回路のように「使い方が確定しない回路」は省略条件を担保できないためELB必須
  • 照明回路のように「用途・環境が確定した回路」は省略条件を立証できれば省略可
  • 「外箱が樹脂」ではなく「充電部に触れられないか」で判断する
  • 内部本体が金属で接地対象なら、別の号の検討が必要
  • 接地抵抗値は「その機器の保護接地」の値であることを確認する
  • 測定した接地極と機器のPE端子が同一接地系統かを確認する
  • 判断に迷ったら条文の原文と所轄への確認を

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【免責事項】本記事は考え方を紹介するものであり、法令への適合性を保証するものではありません。実際の判断にあたっては必ず電気設備の技術基準の解釈の原文を確認し、電気主任技術者・所轄機関にご相談ください。

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