電気設備工事に欠かせない「ケーブルラック」ですが、材質や形状の選び方を間違えると、施工後に腐食や強度不足といった問題が発生する可能性があります。
本記事では、材質・形状・幅の決定方法、そして施工時の注意点についてわかりやすく解説します。
1. 材質の選定方法
スーパーダイマ
- 屋外でよく使用される亜鉛メッキ鋼板の一種。
- 耐候性があり、基本的には問題なく使用可能。
ただし注意点があります。
👉 酸性・アルカリ性の化学物質が存在する環境では腐食が進みやすく、原型が失われるほど劣化することもあります。
実際にあった例では、隣が薬品工場という立地の屋根上ラックが、スーパーダイマ製にもかかわらず原型がなくなるほど朽ち果てていました。「屋外=スーパーダイマでOK」ではなく、隣接工場の排気など周辺環境まで見て材質を選ぶ必要があります。
ステンレス
- 酸性やアルカリなどの腐食環境に強い。
- 腐食リスクが懸念される場合は、ステンレス製を選定するのが安全です。
環境別の材質早見表
| 環境 | 推奨材質 |
|---|---|
| 屋内(一般) | 電気亜鉛めっき |
| 屋外(一般) | 溶融亜鉛めっき・スーパーダイマ |
| 沿岸部(塩害) | SUS316(304は塩害にやや弱い) |
| 酸・アルカリ環境 | ステンレス(薬品の種類に応じて選定) |
沿岸部の劣化事例はIP等級の記事で詳しく紹介しています。
2. 形状の選定(SRとQR)
ケーブルラックには主に SR形 と QR形 があります。
| 種類 | 高さ | 有効寸法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SR | 70mm | 55mm | 一般的な用途で多用される |
| QR | 100mm | 80mm | 強度が高く、収容力も大きい |
- CVT200mm²以上を使用する場合は、QRを選定しないと収まらないケースがあります。
- 支持点が長い場合や荷重が大きい場合も、強度のあるQRを選んだ方が安心です。
3. 幅の決定方法
ケーブルラックの幅は次のように計算します。
幅 ≒ 1.2 × { (ケーブル本数 × (ケーブル外径+10)) + 60 }
- 占有率は 32%以下 で検討します。
- 増設予定がなければ(ケーブル本数 × (ケーブル外径+10)) + 60(アース分)
- 弱電ケーブルを敷設する場合は、+150mm の余裕を持たせるとよいでしょう。強電との離隔は 100mm 必要だからです。
👉 実際の現場では将来の増設を見込んで、少し余裕を持たせて選定するのが一般的です。
4. 施工上の注意点
(0) 支持間隔の目安
鋼製ラックの支持間隔は水平部2m以下・垂直部3m以下が標準的な目安ですが、ケーブルを多条数載せると相当な重量になります。私は水平・垂直とも1.5m以下を基本にし、固定方法によってはさらに短くしています。支持間隔が広くなる場合は、強度のあるQR形を選定します。
(1) 強電と弱電の離隔
- 100mm以上必要。
- セパレータを使用しC種アースを取ることが多い。
- 樹脂管などで接触しないよう保護すれば問題なし。
実務では、弱電を強電と同じラックに載せる場合は弱電側をPF管に入れて物理的に接触させないようにしています。離隔100mmの確保が難しい場所でも有効な方法です。
(2) ノイズ対策
- 大電流ケーブルと並行敷設する場合、ノイズが乗りやすいためシールドケーブルを推奨。
(3) 伸縮継手
- 30mごとに設置する必要あり。
- 支持物とケーブルラックの膨張率が異なるため、未設置だと歪みや建物にダメージを与える可能性があります。
(4) 固定方法
- 水平用・垂直用がある。
- 垂直方向では必ず「垂直用」を使用しないと、ケーブルラックの自重でずり下がる危険がある。
また、垂直部でケーブルを固定するときは、全ケーブルを同じ桁(子桁)に止めないこと。1本の桁に電線の自重が全部かかってしまうため、互い違い(千鳥)に固定して荷重を分散させます。
(5) 蓋(カバー)の固定
- 蓋と蓋のつなぎ目に抑え金具を使うのはNG。
- 基本的に 4点支持 を行う。
- 強風時、蓋が飛散しないように正しく固定することが重要。
- 垂直部分では垂直用を使用しないと飛散リスクが高いため注意が必要。
経験上、蓋の固定はかなりの業者が間違えています。メーカーの技術基準まで読む人がほとんどいない印象で、つなぎ目への抑え金具使用など自己流の施工が目立ちます。蓋・金具はメーカー基準どおりに施工されているかを検査で確認しています。
5. ラックの接地を忘れずに(未施工がそこそこある)
ケーブルラックは金属体なので接地が必要です。種別は回路電圧で決まり、300V以下ならD種、300V超(太陽光の直流回路など)ならC種。実際、太陽光の現場ではC種接地が多くなります。
検査をしていると、ラックの接地をしていない業者がそこそこいます。また、接地線はつないであっても継手部のボンド(ラック同士の電気的接続)が抜けていて、途中から先が接地されていないケースもあります。接地端子だけでなく、継手部の導通まで確認するのが確実です。
6. 多条数敷設と許容電流の低減係数
ラックに複数条のケーブルを載せる場合、原則として許容電流の低減係数を考慮する必要があります。低減係数を省略できるのは、ケーブル相互の離隔が確保されている場合です。
実際にあった例では、「ケーブルラックは気中の敷設だから低減係数は不要」と主張する業者がいました。しかし現場を見るとケーブル相互の離隔が確保されておらず、低減係数の省略は認められないため却下しました。「気中だからOK」ではなく、離隔が取れているかどうかが判断基準です。
まとめ
ケーブルラックの選定では以下の点を押さえておくと安心です。
- 材質:環境によりスーパーダイマかステンレスを選ぶ
- 形状:SRとQRの違いを理解し、荷重やケーブルサイズに応じて選定
- 幅:計算式と占有率を基準に決定、弱電や増設を考慮
- 施工:離隔・ノイズ対策・伸縮継手・固定方法・蓋の取り付けに注意
- 接地:300V以下はD種、300V超(太陽光の直流回路等)はC種。継手部のボンド導通も確認
- 多条数敷設は原則、許容電流の低減係数を考慮(離隔が確保できていない「気中だからOK」は通らない)
- 支持間隔:標準2m以下でも、実務では1.5m以下が安心
現場でのトラブルを防ぐためにも、規格や施工基準を確認しながら選定・施工を行うことが大切です。
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