電柱・ポールの強度はこう選ぶ 架空線の水平張力から考える

はじめに

太陽光発電の設置工事や低圧・高圧配電線の引き込み工事では、建物と電柱・ポールの間に架空線を張る場面があります。このとき「どの電柱やポールを使えばよいか」という判断に迷うことがあります。

電柱やポールの選定には、架空線が電柱に与える水平張力を正しく把握することが重要です。この記事では水平張力の考え方と、電柱・ポールの強度選定の基本を解説します。記事の最後には実際に計算できるツールも掲載していますので、ぜひ活用してください。

水平張力とは何か

架空線は2本の電柱やポールの間に張られ、自重によって弧を描くようにたるみます。このたるみのことを弛度(しど)といいます。

電線がたるむということは、両端の取付点に向かって斜め方向の張力が発生しているということです。この張力の水平成分を水平張力といい、電柱やポールは常にこの力を受けています。

水平張力Tは次の式で求めることができます。

T = w × S² / (8 × D)

w:電線の単位重量(N/m)× 本数
S:径間(m)
D:たるみ(m)

たるみDは一般的に径間Sの2%を使います。

D = S × 0.02

ここで重要なのは、たるみが小さいほど水平張力が大きくなるという点です。ぴんと張った電線ほど電柱への負担が大きくなります。冬場に電線が冷えて縮むと張力が増すのもこのためです。

[架空線の径間・たるみ・水平張力の関係図をここに挿入]


電柱・ポールの強度区分

電柱やポールには設計荷重が定められており、水平張力がこの設計荷重を超えないことを確認する必要があります。

コンクリート柱

コンクリート柱はJIS規格でA種・B種・C種に分類されています。

種別設計荷重
A種1,770 N
B種3,430 N
C種4,900 N

一般的な配電線工事ではB種が多く使われます。

鋼管ポール

鋼管ポールはメーカーや径によって設計荷重が異なります。小型のものでは490N程度、大型になると1,176N前後のものが使われます。

安全率の考え方

水平張力Tに安全率をかけた値が設計荷重以内であればOKと判断します。

T × 安全率 ≦ 設計荷重
安全率は支線の有無によって変わります。

条件安全率
支線なし2.8
支線あり2.0

支線がない場合は電柱が単独で水平張力を負担するため、安全率を大きく取ります。


支線の効果

電柱に斜めに張る**支線(ガイワイヤー)**は、電柱が水平張力で傾くのを防ぐ役割を果たします。

支線は地面のアンカーと電柱の取付点を斜めにつなぐため、支線の引っ張る力のうち**水平方向の成分(水平分力)**が電線の水平張力に対抗します。

水平分力は支線の仰角θを使って次のように求めます。

水平分力 = 支線の引き抜き強度 × cos(θ)

仰角θは取付高さhと水平距離dから求められます。

θ = arctan(h / d)
cos(θ) = d / √(h² + d²)

現場では仰角を直接測るより、高さと水平距離を測る方が簡単です。この2つの数値を入力するだけで仰角とcos値が自動計算されます。

支線の水平分力が電線の水平張力T以上であれば支線はOKです。支線がOKの場合は安全率2.0で電柱の判定を行います。支線がNGの場合は支線なしと同じ安全率2.8で判定します。

[支線の角度・水平分力の説明図をここに挿入]


計算ツールの使い方

以下のツールを使えば、電線の種類・本数・径間を入力するだけで水平張力と電柱・ポールの適否が自動的に判定されます。

入力項目

  • 電線の種類:高圧CVT38mm²・低圧CVT(各サイズ)・PVCC3.5mm²・PVCC5.5mm²から選択
  • 本数:架空する電線の本数
  • 径間:電柱間の距離(m)
  • 支線の有無:支線なし/支線ありを選択。支線ありの場合は取付高さ・水平距離・引き抜き強度を入力
  • 電柱・ポールの種別:コンクリート柱A・B・C種または鋼管ポールから選択

計算例

太陽光発電用のPVCC3.5mm²を50本、径間5mで張り、コンクリート柱B種を使う場合を計算してみます。

w = 0.55 N/m × 50本 = 27.5 N/m
D = 5m × 0.02 = 0.1m
T = 27.5 × 5² / (8 × 0.1) = 859 N

必要強度 = 859 × 2.8 = 2,406 N
設計荷重 = 3,430 N(B種)

2,406 N ≦ 3,430 N → OK 余裕率 1.43倍

この条件ではB種コンクリート柱で問題ないことがわかります。

架空線 水平張力計算ツール

架空線の水平張力を算出し、電柱・ポールの設計荷重に対する適否を判定します

電線条件
支線条件
電柱・ポールの種別

入力に不足または誤りがあります。すべての項目を確認してください。

計算結果
電線荷重
電線の種類
単位重量 w(1本あたり)
本数
合計単位重量 w × 本数

水平張力
径間 S
たるみ D(S × 2%)
水平張力 T = w×S2 / (8×D)

電柱・ポール判定
適用安全率
必要強度 T × 安全率
設計荷重
電柱・ポール判定(必要強度 <= 設計荷重)
電柱余裕率(設計荷重 / 必要強度)

まとめ

電柱・ポールの強度選定は、架空線の水平張力を正しく把握することから始まります。

  • 水平張力はT = w × S² / (8 × D)で求める
  • たるみは径間の2%で計算する
  • 支線なしは安全率2.8、支線ありは安全率2.0で判定する
  • 支線の効果は水平分力(引き抜き強度 × cosθ)で確認する

上のツールを使えばこれらの計算をまとめて行えます。電柱やポールを選ぶ際の参考にしてください。

なお本記事の計算は簡易計算です。実際の設計においては関係法令・規格および専門家の判断に従ってください

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