銅の値段が上がり続けています。太陽光発電所では電線の盗難も多く、狙われるのはほとんどが銅の電線です。私の案件では盗難は少ないですが、「アルミ電線は使えるのか」を一度きちんと調べることにしました。
ちょうど、屋上に太陽光を載せる建物で、PCSから受電側まで電線を高さ16m立ち下げる設計があります。立ち下げが長いと、電線の重さはそのまま建物(ラックや支持金具)にかかります。この記事では、その案件の条件で銅とアルミを比べ、重さ・太さ・電流減少係数・施工の注意点を整理します。
アルミ電線のメリットとデメリット
メリット
- 材料費が安い:銅の相場が高いほど差が大きくなります。ただし差額は相場と数量で大きく変わるので、案件ごとに見積もりで比べます。
- 軽い:アルミの比重は銅の約3分の1です。太くしても、全体ではかなり軽くなります。
- 盗まれにくい:くず鉄としての値段が銅より安いため、盗む理由が減ります。
デメリット
- 太くなる:導電率が銅の約60%なので、同じ電流を流すには1〜2サイズ上げる必要があります(重さは同じ電流の銅の約6〜8割)。ラック・配管・盤のスペースも大きくなります。
- 接続部が弱点:表面の酸化皮膜、銅との接触による腐食(電食)、締め付け部が時間とともに緩む「クリープ」があり、専用の端子と施工が必要です。
- 曲げ直しに弱い:柔らかく曲げやすい反面、同じ所を何度も曲げると折れやすくなります。
実案件の条件
- PCS出力:三相210V、125kVA × 3系統
- ケーブル長:立ち下げ16m+水平15m=1系統31m(3系統で93m)
- 敷設:ケーブルラック
1系統の電流は次のとおりです。
I = 125,000 ÷(√3 × 210)≒ 344A
210Vで125kVAは電流がかなり大きく、ここで電線の太さが決まります。
電流減少係数をどう見るか
複数のケーブルをまとめて敷設すると熱がこもるため、許容電流に「電流減少係数」をかけます。配管の場合、3本以下なら0.70です。係数の考え方は、アルミ電線も銅線と同じです。
ラックの場合は配管より放熱しやすく、本来はもう少し緩い係数で見られます。ただ私は、ラック上でケーブルが寄ってしまうことや、夏の屋上の温度を考えて、ラックでも配管と同じ0.7で見るようにしています。
アルミ電線と銅線の許容電流
日本電線工業会の技術資料(JCS 0168-2にもとづく値)から、600V CVTの許容電流を並べました。気中・暗きょ布設、周囲温度40℃、1回線の値です。
| アルミCVT | 許容電流 | 同等の銅CVT | 許容電流 |
|---|---|---|---|
| 22sq | 88A | 14sq | 86A |
| 38sq | 120A | 22sq | 110A |
| 60sq | 160A | 38sq | 155A |
| 100sq | 225A | 60sq | 210A |
| 150sq | 295A | 100sq | 290A |
| 200sq | 365A | 150sq | 380A |
| 250sq | 420A | ― | ― |
| 325sq | 500A | 200sq | 465A |
| 400sq | 575A | 250sq | 535A |
| 500sq | 670A | 325sq | 635A |
アルミは、同じ電流を流すのに銅より1サイズ(100sq以下)〜2サイズ(150sq以上)太くなります。
実案件での太さの選定
344Aに減少係数0.7をかけて選ぶと、次のようになります。
| 選んだサイズ | 許容電流×0.7 | 判定 | |
|---|---|---|---|
| 銅CVT | 250sq | 535×0.7=約374A | OK |
| アルミCVT | 325sq | 500×0.7=350A | OK(余裕は少ない) |
銅は200sqでは325Aで足りず、250sqになります。アルミは250sqでは294Aで足りず、325sqになります。アルミ325sqは350Aで、344Aに対して余裕がほとんどありません。
重さと外径の比較
製品の仕様書にある概算質量(CVT、ケーブル全体)で比べます。
| 外径 | 1mあたり | 93m(3系統) | うち立ち下げ48m | |
|---|---|---|---|---|
| 銅CVT 250sq | 約60mm | 約7.4kg | 約690kg | 約356kg |
| アルミCVT 325sq | 約66mm | 約4.0kg | 約375kg | 約193kg |
| 差 | +6mm | 約3.4kg | 約315kg | 約163kg |
ケーブル全体で約315kg、建物にぶら下がる立ち下げ部分だけで約160kg軽くなります。外径は1本あたり6mmほど太くなるので、ラックの幅や盤の引き込み口に余裕があるか確認します。
曲げ半径
曲げ半径も、減少係数と同じく考え方は銅と同じです(ケーブル外径の何倍という倍率は変わりません)。ただし外径が太くなるぶん、曲げ半径もその割合で大きくなります。
今回なら外径が約60mm→約66mmなので、外径の6倍で見ると曲げ半径は約360mm→約400mmです。立ち下げの曲がり角やプルボックス、盤内の配線スペースは、そのぶん広く取ります。(倍率は内線規程とメーカーの値で確認します)
電圧降下
31m・344Aで計算すると、次のとおりです。
- 銅250sq:約1.3V(約0.6%)
- アルミ325sq:約1.7V(約0.8%)
距離が短いので、この案件では電圧降下で太さが決まることはありません。長い距離を引く案件では、アルミの方が電圧降下が大きくなる点に注意します。
アルミ電線の接続で気をつけること
- 酸化皮膜を落とす:接続の直前に、ワイヤーブラシや専用工具で導体の表面を磨きます。
- アルミ専用の端子を使う:スズめっきされ、中に酸化防止のコンパウンドが入った専用の圧縮端子を使います。端子が大きいので、ブレーカーの端子の間隔に合うか事前に確認します。
- 緩み対策:メーカー指定の座金を使い、トルクレンチで規定トルクに締めます。
- 防水処理:屋外の盤では、結露水が入らないよう、端子の根元を自己融着テープなどで巻きます。
- 曲げは一発で:曲げ直しに弱いので、くせ付けは慎重に一回で決めます。
埋設配管で使うときの留意点
アルミは銅より水に弱いため、埋設配管が禁止というわけではありませんが、留意が必要です。被覆の中にあるうちは問題ありませんが、むき出しの導体に水が付くと腐食が進みます。腐食してできる白い粉は電気を通さず、接続部の接触不良や発熱の原因になります。
- 配管内に水がたまるのは前提として考える
- ハンドホールや管路の途中で接続しない(1本ものにする)
- 通線前後のケーブルの切り口は、キャップやテープでふさぐ
- 通線時にシースを傷つけない
盗難対策として効くか
盗まれるのは電線で、狙いは銅です。アルミに変えると、盗んでも売れる値段が安いので、狙われる理由は減ります。
ただし、外から見ただけでは中身が銅かアルミか分からないので、切られてから気づかれることもあります。「アルミ電線使用」の表示を目立つ場所に付けると、効果が上がると考えています。
まとめ
- 210V・125kVAは電流が約344Aと大きく、減少係数0.7をかけると銅は250sq、アルミは325sqになる
- 減少係数の考え方はアルミも銅と同じ
- アルミにすると、93mで約315kg、立ち下げ部分だけでも約160kg軽くなる
- ただしアルミ側は許容電流の余裕が少なく、外径も太くなるので、ラック・盤のスペースを確保する
- 接続部(皮膜の除去・専用端子・トルク管理・防水)が品質のカギ
- 盗難対策としても一定の効果がある


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