避雷導体のある屋根に太陽光を載せるときの設計ポイント【実務】

太陽光×避雷導体 設計のポイント

屋上に避雷導体(メッシュ)が張られた建物に太陽光を載せる案件は、自家消費やPPAで増えています。この記事では、実際の現調と設計で検討したポイントをまとめます。避雷設備の基本(目的・方式・1.5mと14sqの話)は避雷設備の記事で解説しているので、あわせて読んでください。

この記事でわかること

  • パネルは避雷導体より低ければ保護範囲内として扱える理由
  • 導体より高い物(通路・手すり)の考え方
  • ケーブルラックが導体に近づくときの施工方法
  • 接地の考え方(屋上全体をA種にまとめる)
  • SPDの種類と選び方

🔹 現調で見るポイント

今回の現場は、屋上に避雷導体がメッシュ状に張られていて、導体の高さは屋根面から10cmほどでした。基本はこのメッシュで屋上を保護し、太陽光用の通路と手すりが導体より高く突き出るため、その部分だけ避雷針(突針)を立てて保護していました。

現調では次の点を確認しておくと、設計がスムーズです。

  • 避雷導体の高さと網目の間隔
  • 引下げ導体の位置
  • 突針の位置と高さ
  • 屋上の既存設備(手すり・架台・ラック)と導体の距離

🔹 パネルは導体より低ければ保護範囲内

避雷針の保護範囲の比較図。保護角法と回転球体法
導体より低いパネルは保護範囲内、導体より高い手すりなどは突針で保護する

メッシュ方式は、網目の間隔を守って導体を張ることで屋根面を保護する方式です。パネルの一番高いところが導体より低く、網目の内側に収まっていれば、保護範囲内として扱うのが一般的です。

ただし、回転球体法で厳密に計算すると、球は網目の中で導体より少し下まで沈み込みます。計算上は「導体より低い=必ず安全」とまでは言い切れません。危険物施設など、絶対に落雷させたくない物件では設計者と詰めておく必要があります。

確認するのは次の3点です。

  • パネル本体だけでなく、架台やケーブルも含めて導体より低いこと
  • 屋根の端や導体のラインより外にはみ出していないこと
  • 導体の近くにある金属部分はボンディングするか離隔を取ること

🔹 導体より高い物は突針で保護する

導体より高い物は、その物自体が屋上で一番高い点になり、雷が直接落ちる候補になります。メッシュでは守れません。

対策は2つです。

  • 避雷導体を嵩上げする:導体を高くして、突き出た物を網目の高さの下に収めます。対象が広い範囲にあるときに向いています。
  • 突針を立てる:保護角法や回転球体法で、突き出た物を保護範囲に入れます。通路や手すりのように局所的な物に向いています。

あまりにも高い突起物は、嵩上げでは対応しきれません。突針で保護範囲に入れる方が現実的です。


🔹 パネルは導体から1.5m離す

避雷導体や引下げ導体の近くに金属体があると、雷の高い電圧で飛び移り(側撃)が起こる可能性があります。今回は、パネルを導体から1.5m離して配置する方針にしました。

「1.5m」と「14sq」は旧基準由来の実務ルールで、現行JISでは条件に応じて安全離隔距離を計算する考え方です。詳しくは避雷設備の記事の「読者からの質問」を参照してください。


🔹 ケーブルラックが導体に近づくとき

パネルは離せても、配線ルートのケーブルラックは導体をまたいだり、近づいたりします。ラックは高さもあるので、導体より高く突き出てしまいます。

方法は2つ考えられます。

  • 避雷導体を嵩上げする:ラックを網目の高さの下に収めます。ただ、ルート全体で導体を上げるのは手間とコストがかかります。
  • ラックの上に避雷導体を敷設する:今回はこちらにしました。

今回の施工方法

  • ラックの支持金具に、避雷導体用の金具で導体を取り付け、ラックの上に敷設する
  • ラックと導体は離隔が取れないので、14sq以上で同電位ボンディングする
  • 導体の両端を既存のメッシュにつないでループさせる
  • ラックにはふたをする

ループさせる理由

片側だけをメッシュにつなぐと、落雷電流が1本の経路に集中します。両端をつなげば電流が分かれて流れ、周りの金属への飛び移りのリスクを下げられます。ラックが長い場合は、途中でもメッシュとつなぐとさらに良くなります。

ふたと継ぎ目

ラックをボンディングすると、ラックにも雷電流の一部が流れます。中のDCケーブルにサージが乗りにくいよう、ふたをしてシールドします。ラックのジョイント部やふたの継ぎ目が電気的につながっていないとシールド効果が落ちるので、継ぎ目のボンディングも確認します。

異種金属に注意

銅の導体と溶融亜鉛めっきのラックを直接触れさせると、電食(腐食)します。避雷導体用の金具や、異種金属用の金具を使います。


🔹 接地:屋上全体をA種にまとめる

太陽光の架台は、DC側が300Vを超えるため本来はC種接地です。ただ、今回はラックやラックに近いパネルを避雷設備と14sq以上でボンディングするので、その部分は避雷設備の接地(A種相当)とつながります。

ここで、一部だけA種、残りはC種と分けると、次の問題が出てきます。

  • 循環電流:A種とC種があちこちでつながると、避雷導体・ラック・架台・接地線・大地で電流が回る「ループ」ができます。落雷時には、ここに雷電流や雷の磁界による誘導電流が流れます(循環電流)。
  • C種側への悪影響:A種とC種がつながっていると、雷電流がA種からC種へ流れ込みやすくなります。C種側につながる他の機器にまで影響が広がります。

そこで今回は、屋上の太陽光はすべてA種にまとめ、C種は使わない方針にしました。A種の10Ω以下・14sqのボンディングは、C種の条件(10Ω以下)も満たしています。屋上全体を避雷設備と同電位にしておけば、屋上の中では電位差が生まれにくくなります。

まとめるときの注意点

  • 屋上と地上の境目:屋上がA種でも、PCSやキュービクルが地上にあると、DCケーブルが屋上(A種)と地上(別の接地)をまたぎます。落雷時の電位差はこの境目にかかるので、ここを守るのがPCSのSPDです。
  • 接地線の引き回し:接地線はラックやDCケーブルに沿わせて配線し、ループの面積を小さくします。
  • 接地極どうしの距離:A種と他の接地の接地極が近いと、大地を通して電位が伝わります。接地極は離して打ちます。

🔹 SPD(サージ防護デバイス)の種類

避雷針や避雷導体が守るのは建物への直撃雷(外部雷保護)です。ケーブルに乗ってくるサージから機器を守るのはSPDの役割です(内部雷保護)。

種類 想定する雷 試験の波形 主な設置場所
Type1(クラスⅠ) 直撃雷の電流の一部 10/350μs(エネルギーが大きい) 引込口・避雷設備と接続される箇所
Type2(クラスⅡ) 誘導雷 8/20μs 分電盤・PCS
Type3(クラスⅢ) 残りの小さいサージ 複合波 機器の直前

太陽光のDC側用には専用のSPD(IEC 61643-31)があり、DC1000V用・1500V用などがあります。

今回の考え方

ストリングPCSは、DC側・AC側にType2のSPDを内蔵している機種が多いので、まず採用するPCSの仕様を確認します。

ラックをボンディングして雷電流の一部が流れる構成では、厳密にはType1が求められます。ただ、今回は次の条件がそろっているので、内蔵のType2で対応する判断にしました。

  • ふた付きの金属ラックでシールドしている
  • パネルは導体より低く、1.5m離している

もっと固くしたい場合は、PCSの手前のDC側に外付けのType1+2のSPDを入れる方法があります。ストリングを直接PCSにつなぐ構成では、そのための箱が別に必要になります。


🔹 まとめ:設計時のチェックリスト

  • ☐ 避雷導体の高さ・網目・引下げ導体の位置を現調で確認した
  • ☐ パネル(架台・ケーブル含む)は導体より低く、網目の内側に収まっている
  • ☐ 導体より高い物は、嵩上げか突針で保護範囲に入れた
  • ☐ パネルは導体から1.5m離した(近い物は14sq以上でボンディング)
  • ☐ ラックは導体と14sq以上でボンディングし、両端をメッシュにつないでループさせた
  • ☐ ラックにふたをし、継ぎ目のボンディングを確認した
  • ☐ 異種金属の接触を避ける金具を使った
  • ☐ 屋上の太陽光はA種にまとめ、C種と混在させていない
  • ☐ 屋上と地上の境目(DCケーブル)をSPDで守っている
  • ☐ PCSのSPD(内蔵の有無・種類)を確認した

避雷設備の基本は避雷設備の記事、接地の種類はA〜D種接地の記事で解説しています。

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