太陽光発電の運用で、発電停止の原因として一番多いのがOVGR動作です。地域によっては頻発し、そのたびに主任技術者が対応に追われます。
OVGR(地絡過電圧継電器)は、太陽光発電や非常用発電機を高圧で系統連系するときに設置が求められる保護継電器です。この記事では、仕組みとGRとの違いに加えて、「動作したらどうするか」「なぜこんなに頻繁に動くのか」という運用の現実まで解説します。
この記事でわかること
- OVGRの役割と動作原理(ZPD・整定値10%の意味)
- GR・DGRとの違い(比較表)
- 【実録】OVGR動作の原因はほとんど「構外」——動作時の切り分けフロー
- 試験端子の配置など、設計時に喜ばれる実務の小ネタ
- ZPDにまつわる勘違い(OVGR専用ではない)
🔹 OVGRとは?系統連系に必須の保護継電器
太陽光発電設備や非常用発電機を高圧で電力系統に接続(系統連系)する際、OVGR(Over Voltage Ground Relay:地絡過電圧継電器)の設置が求められます。役割は、系統のどこかで地絡が起きたとき、発電設備を安全に停止させることです。
「GR(地絡継電器)やDGRが引込点に付いているなら十分では?」と思うかもしれませんが、それだけでは不十分です。理由は検出範囲にあります。
🔹 GRとOVGRの違い【比較表】
| 比較項目 | GR(地絡継電器) | OVGR(地絡過電圧継電器) |
|---|---|---|
| 検出するもの | 零相電流 | 零相電圧 |
| 使用センサ | ZCT(零相変流器) | ZPD(零相電圧検出器) |
| 検出範囲 | 構内(需要家内)の地絡のみ | 電力系統全体の地絡 |
| 主な動作原因 | 構内ケーブル損傷・機器漏電 | 構外の系統事故・雷など |
GRは構内の漏電しか検出できません。もし電力会社側の配電線で地絡が起きても、GRは反応せず、自家発電設備は発電を続けてしまいます。事故点に電力を送り続けるのは事故拡大や感電の原因になるため、構外の地絡も検出できるOVGRが必要になるのです。
🔗 関連:地絡継電器(GR)と地絡方向継電器(DGR)の違い
🔹 動作原理:電圧のバランスの崩れを見る
三相(R・S・T)が健全なら、ベクトル図は正三角形にバランスし、中性点に電圧は現れません。どこかの相が地絡するとバランスが崩れ、中性点に零相電圧が発生します。これをZPDで検出してOVGRが動作します。
- 完全地絡時の零相電圧:6,600V ÷ √3 ≒ 3,810V
- 一般的な整定:その10%=約381V(一次換算)で検出

🔹 【実録】太陽光の停止原因ナンバーワンがOVGR
運用の現実を書きます。太陽光発電所で「発電が止まった」という連絡のうち、一番多い原因がOVGR動作です。地域によっては頻発します。
そして経験上、原因のほとんどは電力会社側(構外)です。しかも、かなり遠方の系統事故を拾っていることが多いようです。OVGRは系統全体の零相電圧を見ているので、同じ配電系統につながる太陽光が、事業所単位ではなくエリアごと一斉に停止します。落雷の多い日など、そのエリアの主任技術者は各所の復帰対応で大変そうです。
動作したときの切り分けフロー
OVGRが動作しても、慌てて「故障だ」と考える必要はありません。次の順で切り分けます。
- 構内の地絡でないか確認——GR・DGRも同時に動作していないか、構内設備に異常・異臭・損傷がないか
- 周辺の状況を確認——同じエリアの他の太陽光も止まっていれば、構外(系統側)の可能性が濃厚。雷や天候も手がかり
- 構内に異常がなければ復帰——動作日時・状況を記録して復帰操作。頻発する場合は電力会社への状況確認も
ポイントは、OVGRの動作=もらい動作(構外原因)であることが大半という前提を持っておくこと。ただし構内地絡の可能性をゼロにしないため、①の確認は省略しないでください。
雷での誤動作もある
ZPDは対地電圧の異常を検出するため、雷による異常電圧でも動作することがあります。安全側に倒れる性質なので、これは許容すべき挙動です。「OVGRはよく動くもの」という前提で運用体制を作っておくのが現実的です。
🔹 設計の小ネタ:試験端子(T・E)は盤の表面に
OVGRを含む保護継電器は、年次点検のたびに継電器試験を行います。このとき使うのが試験端子です。
設計・製作の段階で、試験端子のT(Test)とE(Earth)を盤の表面のアクセスしやすい位置に設置しておくと、点検する主任技術者に喜ばれます。奥まった位置にあると、毎年の試験のたびに手間がかかるからです。ほんの少しの配慮ですが、10年20年と毎年効いてくる、設備を「使う人」目線の設計です。
🔹 勘違い注意:ZPDはOVGR専用ではない
「ZPDが付いている=OVGR用」と思い込んでいる人がいますが、ZPDは方向性地絡継電器(DGR)でも使われます。
DGRは、ZCTの零相電流とZPDの零相電圧の両方を見て、位相関係から「地絡が構内か構外か」の方向を判定しています。つまりZPDは「零相電圧を取り出すセンサ」であって、つながる先はOVGRとは限りません。図面でZPDを見つけたら、どの継電器に接続されているかまで確認する癖をつけましょう。
🔗 関連:地絡継電器(GR)と地絡方向継電器(DGR)の違い
🔹 よくある質問
Q. OVGRが動作した=自分の設備の故障?
大半は違います。経験上、原因のほとんどは構外(電力会社側の系統事故や雷)です。ただし構内地絡の可能性もあるため、GR等の動作有無と構内の異常確認をしてから復帰してください。
Q. 整定値はいくつが一般的?
零相電圧の検出レベルは完全地絡時(約3,810V)の10%=約381V(一次換算)が一般的です。動作時限を含めた整定は電力会社との協議で決まります。
Q. GR・DGRがあればOVGRは不要では?
不要にはなりません。GR・DGRは構内の保護、OVGRは系統全体を見る発電設備側の保護で、役割が違います。発電設備の系統連系では両方必要です。
🔹 まとめ|明日現場で使える3ポイント
- OVGRは電圧(ZPD)で系統全体の地絡を検出する、発電設備の系統連系に必須の保護。GR(電流・構内のみ)では代われない
- 動作原因の大半は構外。エリアの太陽光が一斉に止まるのが特徴。切り分けは「構内確認→周辺確認→記録して復帰」の順
- 試験端子T・Eは盤表面に(毎年の試験で効く)。ZPDはDGRでも使うので、図面では接続先まで確認
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