太陽光発電設備は「発電設備」です。
そのため、単に発電するだけではなく、電力会社の系統へ安全かつ高品質な電力を供給する必要があります。
もし系統側の電圧や周波数に異常が発生している状態で発電を続けてしまうと、
- 設備故障
- 感電事故
- 系統事故
などにつながる可能性があります。
そのため、太陽光発電設備では様々な保護協調が必要になります。
今回は、
- UV・OV
- UF・OF
- ELB
- OVGR
- RPR
- 出力制御
など、太陽光設備で重要な保護協調について、実務目線でわかりやすく解説します。
太陽光発電で求められる保護機能
系統連系する太陽光発電設備では、電力会社から各種設定値が指定されます。
主なものとして、
- UV(不足電圧)
- OV(過電圧)
- UF(不足周波数)
- OF(過周波数)
などがあります。
これらは、電力品質に異常が発生した際に、発電設備を停止させるための保護機能です。
また、
- 停電時の発電停止(単独運転防止)
- 漏電時の停止
- 逆潮流防止
- 出力制御
なども求められます。
基本的にはPCS(パワーコンディショナ)の機能で停止制御できますが、一部は外部継電器などを別途設置する必要があります。
低圧側の漏電対策とELB(漏電遮断器)
低圧側では、ELB(漏電遮断器)を設置し、漏電を監視します。
漏電が発生した場合は、直ちに回路を遮断する必要があります。
しかし、太陽光設備ではPCSが直流を交流へ変換する関係上、通常設備より漏れ電流が発生しやすい特徴があります。
さらに、
- 太陽光ケーブルが長い
- パネル枚数が多い
などの理由により、実際には漏電していなくても、ある程度の漏れ電流が流れてしまいます。
そのため、感度電流を適切に設定する必要があります。
感度が小さすぎると、不要動作(誤動作)につながる場合があります。
現場では、感度は最大から考える
感度電流を切り替えられるELBは、最小(いちばん敏感な設定)にしておくと、太陽光の回路ではだいたい動作します。そのため実務では最大値に切り替えます。
特に注意が必要なのが、子ブレーカーをまとめる親ブレーカーです。子それぞれの漏れ電流が合算されるので、子で動かなくても親で動きます。
ただし、感度を下げてよいのは高感度形が求められない回路に限ります。人が触れるおそれのある場所かどうかは、先に確認してください。
400Vは、そのままではELBが効かない
中性点が接地されていない400V系の回路では、ELBをそのまま付けても地絡時に動作しません。地絡電流が大地を通って戻る経路がないためです。そのため、接地コンデンサを設けて、地絡時に電流が流れる経路をつくる必要があります。
PCS専用トランスが必要になる理由
既設トランスへ太陽光PCSを接続する場合、B種接地へ漏れ電流が流れることがあります。
すると、
- PCS由来の漏れ電流
- 他設備の絶縁不良による漏電
の区別がつかなくなる場合があります。
これでは安全性が低下してしまいます。
そのため、PCSに絶縁トランスが内蔵されていない場合は、PCS専用トランスを設置し、専用接地とするケースがあります。
最近の容量の大きいPCSはトランスレスが多く、受電設備の漏電監視にすぐ引っかかります。監視をIor方式に変えるなどの対策はありますが、私の経験では、根本的にはトランスを入れないと解決しませんでした。詳しくは 太陽光発電で漏電ブレーカーが落ちる原因と対策|容量性漏れ電流・Ior方式まで解説 にまとめています。
高圧側の漏電対策とOVGR
高圧側では、通常ZCT(零相変流器)によって漏電検出を行います。
しかし、ZCTは基本的に構内側の漏電しか検出できません。
つまり、系統側で地絡(漏電)が発生していても、そのまま発電を続けてしまう可能性があります。
そのため、高圧太陽光ではOVGR(地絡過電圧継電器)を設置し、電圧変化で地絡を検出します。
OVGRを設置することで、
- 系統側地絡検出
- 事故拡大防止
- 系統保護
につながります。
逆潮流対策とRPR(逆電力継電器)
逆潮流防止には、RPR(逆電力継電器)を使用します。
RPRは、逆方向へ電力が流れた際に検出し、発電停止を行います。
ただし、そのまま設置すると、
- 使用電力が少ない
- 発電量が多い
場合に、頻繁に逆潮流を検出してPCSを停止することがあります。
しかしPCSが停止すると逆潮流が無くなるため、再起動します。
すると再び逆潮流し、また停止します。
このような状態を繰り返すことを「チャタリング」と呼びます。
実際には、追従しないとほぼ必ず起きる
消費電力に追従させない構成だと、チャタリングはほぼ必ず起きます。PCSの自動復帰は300秒が一般的なので、5分ごとに停止と再起動を繰り返します。
自家消費の太陽光が出始めたころは、このサイクルを減らすために、タイマーリレーで制御回路を自作しました。PCSが複数台あったので、1台ごとに復帰時間を5分・30分・1時間・2時間と変えて、全台が同時に戻らないようにする仕組みです。
今考えると、全体の復帰時間をまとめて延ばすやり方でもよかったかもしれません。どちらにしても、タイマーは負荷の状況を見ていません。工場の負荷需要が分かっていれば、もう少しうまく制御できたと思います。それを負荷の実測で解決したのが、今の「RPR+MM」による追従制御です。
ただし追従制御は、計測と通信が生きていることが前提です。停電明けに通信だけが止まってUPRが動作した事例は 太陽光発電の連系保護でUPRが採用された理由とは? で紹介しています。
MM(マルチメータ)連動による出力制御
チャタリング防止のため、MM(マルチメータ)や電力量計を設置し、消費電力に追従して発電量を制御する方法があります。
この方法では、
- 必要な電力だけ発電
- 逆潮流抑制
- PCS停止回数低減
などが可能になります。
そのため、明らかに余剰電力が発生しない設備を除き、「RPR+MM」の組み合わせが望ましいと感じています。
出力制御とは?
最近では、出力制御も重要になっています。
特に中間期などは、電力需要より発電量が多くなる場合があります。
その際、電力会社からの指令により、通信装置を通じてPCSの出力を抑制します。
現在では、この機能を通信装置側へ持たせる構成が一般的です。
太陽光発電の保護協調は非常に重要
太陽光発電は、単に発電するだけの設備ではありません。
- 系統保護
- 漏電対策
- 電力品質維持
- 逆潮流防止
- 出力制御
など、多くの保護協調によって安全性が保たれています。
各種継電器や保護機能を適切に組み合わせることで、安全かつ高品質な電力供給が可能になります。
太陽光発電の保護協調 構成例




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