建物の電気は、大きく電灯(単相)と動力(三相)の2系統に分かれています。配線方式を理解していないと、測定で戸惑うだけでなく、ポンプが逆回転する・機器が壊れるといった実害につながります。
この記事では4つの配線方式の基本に加えて、現場で経験した逆相トラブル・中性線欠相・三相4線式で焦った話まで紹介します。
この記事でわかること
- 単相2線・単相3線・三相3線・三相4線の違い
- 相を間違えるとどうなるか(消火栓ポンプ・クレーンの実話)
- 中性線欠相がなぜ怖いか(ブレーカー選定にも関わる)
- 線間電圧と対地電圧の違いと測定のポイント
🔹 単相2線式(100V)
電線2本(非接地側=黒、接地側=白)で構成される、最もシンプルな方式です。住宅のコンセントや照明はこれが基本です。
- 黒線:対地電圧100V(触ると危険な側)
- 白線:対地電圧0V(接地側)
交流なので「+と−」ではなく、「接地されている側かどうか」で区別します。白=対地0Vという色のルールは、このあとの話にずっと関わってきます。
🔹 単相3線式(100/200V)
一般住宅・小規模施設の引き込みの主流です。黒・白・赤の3本で、100Vと200Vの両方が取れます。
- 黒−白間:100V
- 赤−白間:100V
- 黒−赤間:200V(IH・大型エアコンなど)

中性線欠相に注意!機器が壊れる
単相3線式で一番怖いのが、真ん中の白線(中性線)が切れる「中性線欠相」です。中性線が切れると100Vの回路のバランスが崩れ、片側の機器に最大200V近い電圧がかかって焼損します。
だから分電盤の主幹ブレーカーには中性線欠相保護付きを選ぶのが基本です。太陽光発電用のブレーカーでも、中性線欠相保護付きを使わないと機器が壊れることを現場で学びました。ブレーカー選定は「流れる電流」だけでなく「欠相したときに何が起こるか」まで考える必要があります。
🔗 関連:ブレーカーの種類と選定
🔹 三相3線式(200V)
工場やビルの動力(モーター・ポンプ・ファン)で使われる方式です。R・S・Tの3本で、線間電圧は200V。電力は W=√3×電圧×電流 で計算します。

相を入れ替えると逆回転する【現場の実話】
三相モーターは、3本のうち2本を入れ替えると逆回転します。実際にあった話です。
消火栓ポンプを逆相でつないでしまったときは、ポンプの圧力はある程度出たのに水の流量がまったく流れず、かなり焦りました。羽根車が逆回転しても圧力計はそれらしい値を示すことがあるので、「圧力が出ている=正常」とは限らないのです。
受電設備の更新工事のあとには、構内全体で相順が入れ替わっていて、ホイストクレーンの操作が全部逆向きになったことがあります。上ボタンで下がる、東で西に動く——事故につながりかねない状態です。
この経験から、受電設備の更新後はホイストクレーンやシャッターなど動作方向が目で見える機器を1台選んで最後に動作確認しています。同じトランスにぶら下がっている回路なら、1箇所で相順が正しければ他も同じと判断できるからです。逆に、トランスが別なら別途確認が必要です。
🔗 関連:電気の計測入門(相回転計の使い方)
🔹 三相4線式(400/230V)
三相のスター(Y)結線に中性線を加えた4本の方式です。線間400V・対地(相−中性線間)230Vが取れ、大型の蓄電池設備や大規模施設で使われます。
「三相4線式にして」と言われて焦った話
蓄電池設備の工事で、メーカーから最初「三相3線式で」と聞いて施工したところ、あとから「三相4線式にしてほしい」と言われ、正直意味がわからず焦りました。
結果的には、電源側のトランスがスター結線だったため、スターの中性点から中性線を1本追加で引くことで解決できました。スター結線には中性点があるので4線化できる——デルタ結線ならこうはいきません。「結線方式がわかっていれば怖くない」と実感した出来事でした。
🔗 関連:変圧器(トランス)とは?結線方式の基本
🔹 線間電圧と対地電圧の違い
電気設備の測定で必ず意識するのが、この2つの区別です。
- 線間電圧:線と線の間の電圧(例:黒−赤=200V)
- 対地電圧:線と大地(アース)の間の電圧(例:黒−アース=100V)

| 配線方式 | 線間電圧 | 対地電圧 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 100V | 黒100V/白0V |
| 単相3線式 | 100V/200V | 黒100V/赤100V/白0V |
| 三相3線式(200V) | 200V | R・T相 約200V/S相 0V(S相接地の場合) |
| 三相4線式(400/230V) | 400V | 各相230V/中性線0V |
低圧の三相200V(デルタ結線)では、S相(真ん中の相)をB種接地するのが一般的です。そのため検電器を当てるとR・T相は反応するのにS相は反応せず、新人が「1本死んでる?」と勘違いしがちです。故障ではなく接地相です。
🔹 電灯と動力の見分け方——色を信用しない
現場では電線の被覆色やモールの色で「これは電灯」「これは動力」と見分けることが多いです。ただし私は色を信用しないことにしています。素人や過去の改修で適当な色の電線が使われていることがあるからです。
見分けの最終判断は、テスターで線間電圧・対地電圧を測ること。色は「あたり」をつける材料にとどめます。
なお、400V系の配線には白色の被覆を使いません。白は「対地0Vの接地側」の目印ですが、400V回路にはその意味での白線が存在しないから——先輩にこの理屈を教わったとき、色のルールは安全のためにあると納得しました。
🔹 よくある質問
Q. ブレーカーの「2P2E」「2P1E」って何が違うの?
P=極数(切れる線の数)、E=素子数(過電流を検出する部品の数)です。2P1Eは2本切れるが検出は1本だけで、接地側(白)に素子がない100V回路専用。200V回路は両線とも対地100Vなので、両方に素子がある2P2Eが必須です。私も最初この違いがわからず悩みました。「200Vは2P2E」と覚えてください。
Q. なぜ相を入れ替えるとモーターが逆回転するの?
三相交流はR→S→Tの順に波が来ることで回転磁界を作っています。2本を入れ替えると波の順番が逆になり、磁界が逆回転するためモーターも逆に回ります。
Q. 中性線欠相はどうやって防ぐ?
中性線欠相保護付きのブレーカーを使うこと、そして分電盤の端子の緩み点検(欠相の多くは端子の緩み・接触不良から起きます)です。
🔹 まとめ|明日現場で使える3ポイント
- 三相は2本入れ替わると逆回転。ポンプは圧力が出ても流量が出ないことがある。受電更新後はクレーンなど「動きが見える機器」で最終確認(同一トランス内なら1箇所でOK)
- 単相3線式は中性線欠相が最恐。中性線欠相保護付きブレーカーを選ぶ(太陽光用も)
- 色は信用せず、対地電圧を測って判断。白=対地0Vのルールと、S相接地(検電器が反応しない)を知っておく
次の記事では、接地線(アース)の役割と、A種〜D種までの接地の違いについて解説します。



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