いきなりですが、「コンセントの電圧は何ボルト?」と聞かれて答えられますか?
私はエネルギー関連の会社にいますが、この質問に「100V」と即答できる人は、体感で3割くらいです。電気を扱う業界ですらこれなのですから、答えられなくても恥ずかしいことではありません。きちんと習う機会がなかっただけです。
この記事はシリーズ「電気の基本」の第一章として、すべての土台になる電圧・電流・抵抗・電力を、新人教育で実際に使っている例え話とともに解説します。
このシリーズで学べること
- 第一章(本記事):電圧・電流・抵抗・電力の関係
- 第二章:直流と交流の違い|現場のどこに直流があるか
- 第三章:電気の配線方式(単相・三相)
- 第四章:接地線(アース)の役割とA種〜D種の違い
- 第五章:初心者のための電気資格ロードマップ
- 第六章:電気の計測入門(テスター・メガー)
🔹 電圧・電流・抵抗——水と車でイメージする
電気は目に見えないので、まずイメージを持つことが大切です。定番は「水の流れ」の例えです。
| 項目 | 水の流れに例えると | 意味 |
|---|---|---|
| 電圧(V:ボルト) | 水圧 | 電気を押し出す力 |
| 電流(A:アンペア) | 水の流れる量 | 電気がどれだけ流れているか |
| 抵抗(Ω:オーム) | 配管の細さ・障害物 | 流れを妨げるもの |
同じ水圧でも、配管が太ければ(抵抗が小さければ)水はたくさん流れ、細ければ(抵抗が大きければ)少ししか流れません。
私は新人に教えるとき、車の例えを使うこともあります。電流は道路を走る車の台数、抵抗は道路の狭さや渋滞、電圧は車を目的地へ向かわせる力。道が広ければ車はたくさん流れる、渋滞(抵抗)があれば流れは減る——人によって水よりこちらの方がピンとくることがあるので、両方持っておくと教えるときに便利です。
🔹 オームの法則——電気の世界の基本ルール
電圧(V)・電流(I)・抵抗(R)の関係は、オームの法則で表せます。

V = I × R(電圧 = 電流 × 抵抗)
- 抵抗が同じなら、電圧を上げると電流が増える
- 電圧が同じなら、抵抗が大きいほど電流は減る
例:100Vの電源に10Ωの抵抗をつなぐと?
I = 100 ÷ 10 = 10A の電流が流れます。
🔹 身近な数字で「電気の感覚」をつかむ
言葉より数字です。身の回りの電気を数字で見てみましょう。
| 機器 | 消費電力 | 100Vでの電流 |
|---|---|---|
| スマホの充電器 | 約10〜20W | 約0.1〜0.2A |
| 液晶テレビ | 約100W | 約1A |
| ドライヤー(強) | 約1,200W | 約12A |
| 電子レンジ | 約1,000〜1,400W | 約10〜14A |
| エアコン(冷房時) | 約500〜1,000W | 約5〜10A |
こうして見ると、熱を作る機器(ドライヤー・レンジ)が桁違いに大きいことがわかります。コンセント回路のブレーカーは20Aが標準なので、ドライヤーと電子レンジを同じ回路で同時に使うと 12A+14A=26A で落ちる——「あの現象」の正体はこの足し算です。
新人研修でこの表を見せると、「携帯の充電ってその程度なんですね」と驚かれます。機器のワット数のイメージが持てると、電気はぐっと身近になります。
🔹 並列と直列——コンセントはぜんぶ並列
家庭や建物の配線は、基本的に並列回路です。並列ならどのコンセントにも同じ100Vがかかります。テレビをつないでもドライヤーをつないでも、電圧は常に100V。機器はそれを前提に作られています。

もし直列につなぐと、電圧が機器ごとに分かれてしまい(機器の抵抗値によって配分が変わるため、単純に半分になるとも限りません)、どの機器もまともに動きません。「電圧を一定に保って届ける」ために配電は並列——これが大原則です。
🔹 電力(W)——電圧と電流のかけ算
電力(W:ワット)= 電圧(V)× 電流(A)
「どれだけのエネルギーを使っているか」を表します。
例:100Vで10A流れていれば P = 100 × 10 = 1,000W(1kW)
実務でこの式は逆向きに毎日使います。つまり「機器のkWがわかっていて、流れる電流(A)を求める」方向です。電流がわかれば、ブレーカーのサイズも電線の太さも決められます。第一章のこの式が、そのまま設計の入口なのです。
🔗 関連:ブレーカーの種類と選び方(kW→A換算の実務)/電線の太さの決め方
🔹 電力(W)と電力量(kWh)——みんながつまずく違い
新人教育をしていて、一番苦労する人が多いのがここです。
- 電力(W):いま使っている電気の「勢い」。車でいうスピードメーター
- 電力量(Wh・kWh):使った電気の「合計」。車でいう走行距離
時速100kmで走っても、1分だけなら大した距離になりません。電気も同じで、W(勢い)× 時間 = Wh(合計)です。
例:最初の30分が200W、残りの30分が800Wだった場合
200W × 0.5h + 800W × 0.5h = 100Wh + 400Wh = 500Wh
電気料金の請求はkWh(使った合計)に対してきます。「エアコンは1,000Wだから電気代が高い」ではなく、「1,000Wを何時間使ったか」で決まる——この区別がつけば、省エネの話もデマンドの話も理解できるようになります。
🔹 よくある質問
Q. A(アンペア)とW(ワット)の違いがわかりません
Aは「流れている電気の量」、Wは「実際に仕事をしている量(V×A)」です。日本の家庭はほぼ100Vで一定なので、実用上は「W ÷ 100 = A」と換算できます。1,200Wのドライヤー=12A、と即答できれば現場で通用します。
Q. kWとkWhはどう違う?
kWは瞬間の勢い(スピード)、kWhは合計(走行距離)です。電気料金・省エネ報告・デマンド管理はすべてkWhやkW(最大値)で話が進むので、この区別は設備管理の必須知識です。
Q. なぜ日本のコンセントは100Vなの?
安全性を重視して世界的にも低い電圧が採用されました。ちなみにエアコンやIH用に200Vも来ています(単相3線式)。詳しくは第三章:配線方式で解説します。
🔹 まとめ|第一章のポイント
- 電圧=押す力、電流=流れる量、抵抗=流れにくさ。水でも車でも、自分がピンとくる例えでOK
- V=I×R、P=V×I の2つの式が全ての土台。実務では「kW→A」の逆算でブレーカーと電線を決める
- W(スピード)とkWh(走行距離)を区別する。電気料金はkWhに払っている
次はいよいよ現場寄りの話へ。第二章:直流と交流の違い|現場のどこに直流があるかに進みましょう。



コメント