動力ブレーカーの選定方法|電流計算と遮断容量・幹線の考え方

動力設備で使用するブレーカーの選定は、機器に明確な指定があればそれに従えばよいですが、指定がない場合はどうすればよいのでしょうか?
本記事では、三相動力設備のブレーカー選定方法や、幹線の太さ・遮断容量について詳しく解説します。


1. 機器に指定がない場合は電流値から求める

三相動力設備では、電流値は以下の式で求められます:

電流値の計算式:I = kW / (√3 × 電圧 × 力率)

ここで

  • 電圧:200V(規定値 ±20V のため200Vで計算)
  • 力率:0.8(一般的に悪くても0.8程度とする)

よって、実際には以下のような式となります:I = kW / (1.732 × 200 × 0.8)

このように求めた電流値を元にブレーカー容量を検討します。


2. ブレーカーの選定と注意点

算出された電流値が定格電流の目安になりますが、単純に「直近上位のブレーカー」を選べばいいわけではありません。

ブレーカーの仕様上の注意点:

  • 定格電流の約80%が遮断電流の目安
  • 周囲温度が40℃を超えると遮断電流以下で動作することもある

したがって、余裕を持った選定が必要です。

🔌 動力ブレーカー用 電流計算ツール

三相200V・力率0.8で電流[A]とブレーカー選定目安を自動表示します


電流値(A):

おすすめブレーカー容量(安全率込):


3. 受電設備と分電盤の遮断容量の考え方

動力専用回路では、キュービクル(受電設備)内と動力分電盤の両方にブレーカーを設置する場合があります。このとき、遮断容量を同じにしても問題はありませんが、運用上の問題が発生します。

運用面での注意点:

  • 上流(キュービクル)でブレーカーが動作すると、高圧管理者でなければ復旧できない
  • 分電盤側でブレーカーが動作すれば、現場で対応可能

そのため、分電盤側で遮断できるように設計することが望ましいです。


4. 上下流のブレーカー容量と幹線の太さ

上下流で容量に差がある場合、幹線の太さをどちらに合わせるかが悩みどころです。

基準となる考え方:

下流のブレーカー容量が、上流ブレーカーの定格容量の 55%以上 であれば、下流側の太さで幹線を設計しても良い。

ただし、極端に容量差がある場合は上位に合わせる必要があります。


まとめ

動力ブレーカーの選定は、以下のポイントを押さえることが重要です:

  • 電流計算は「kW ÷ (√3 × 電圧 × 力率)」で求める
  • ブレーカーは遮断電流・温度特性に注意して余裕を持たせる
  • 可能な限り分電盤側で遮断できるように設計
  • 幹線の太さは「下流容量が上流の55%以上」であれば下流に合わせてOK

設備の保守性や復旧性を意識した、親切な設計を心がけましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました