高圧電気設備の保守に欠かせない「開閉器(LBS)」の役割と活用法

高圧

高圧受電設備の保守・点検作業において、安全確保のために必ず行わなければならないのが回路の「解列」(電気的に回路を切り離すこと)です。この解列のために使用される主な装置として、「断路器(DS)」「開閉器(LBS)」「遮断器(VCB)」がありますが、それぞれに明確な役割があります。

今回はその中でも、**開閉器(Load Break Switch:LBS)**にフォーカスして、その機能や用途、注意点について解説します。


開閉器(LBS)の基本機能とは?

LBSは主に無負荷時の回路開閉を安全に行うための装置です。しかし、LBSはオプションや組み合わせによって多彩な機能を持たせることが可能です。

LBSの主な機能:

  1. 断路器としての機能(無負荷時開閉)
  2. 開閉器としての機能(三相一括開放のストライカ機能)
  3. 遮断器としての機能(PFヒューズ併用による遮断)

ストライカ機能とPF(パワーヒューズ)の連携

LBSに取り付けられる**PF(Power Fuse)**は、過電流を遮断するための高圧限流ヒューズです。

  • 異常電流が流れると、ヒューズが溶断し、そのエネルギーでストライカピンが飛び出す構造になっています。
  • このピンがLBSと連動することで、三相一括で自動的に開放され、遮断器としての機能を果たします。

PFの種類と用途:

型番用途
G汎用タイプ(一般的な使用)
Tトランス用
Mモーター用
Cコンデンサ用

選定時には、定格の2〜3倍の直近上位容量が基準とされますが、メーカー仕様を確認することが重要です。


LBSのバリエーションと付属機能

エネセイバー(突入電流防止機能):

  • トランス容量が500kVA以上になると、励磁突入電流が大きくなります。
  • これを緩和するために、エネセイバーを取り付けて、時限を設けた2段階投入を行う仕組みが利用されます。
  • 法的な義務はありませんが、電力会社から設置を求められる場合が多いです。

バリア(小動物侵入防止):

  • 小動物(ヘビ、リスなど)による短絡事故を防止するために、環境に応じてバリアの取り付けが推奨されます。

LBSの使用例と応用

一般的な使用用途:

  • 300kVA以下の受電設備の主遮断器
  • トランスやコンデンサの保護(PFとの組み合わせ)

運用の工夫:

  • 休日や夜間のトランスの無負荷損を低減するための解列
  • コンデンサの進み過ぎ防止(力率改善の過補償対策)
  • 手動ディスコン棒や切替器による開閉操作
  • **APFC(自動力率調整器)**との連携による自動開閉制御

まとめ

LBSは「ただのスイッチ」ではなく、構成や周辺機器との組み合わせ次第で多様な機能を果たす高圧保守の要です。安全な保守・運用のためには、LBSの仕様・役割を正しく理解し、適切な選定・設置を行うことが不可欠です。

設備の容量や運用条件に応じて、ストライカ機能、エネセイバー、バリア、PFヒューズなどのオプションを活用し、現場に最適な形で電気設備の信頼性と安全性を確保しましょう。

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