一般的に動力用の三相変圧器といえば、最初から三相一体で作られているものを使うのが普通です。しかし実は、単相変圧器を3台組み合わせることでも動力用として使用することが可能です。
とはいえ、単相3台構成には注意点もあります。設置面積が広く必要だったり、効率がやや悪くなったりするため、通常はあまり採用されません。ですが、これにはいざというときに助かる利点も存在します。
単相3台構成のメリット
1台故障してもV結線で運転できる!
もし3台のうち1台が故障した場合でも、残り2台を使ってV結線運転ができます。これにより、完全停止を回避できるのが大きなメリットです。
ただし、出力容量は当然低下します。
例えば、10kWの単相変圧器を3台組み合わせた場合、通常の三相運転なら
10kW × 3台 = 30kW
の出力が可能ですが、V結線にすると
20kW × (√3/2) ≈ 17.32kW
となり、約**86%**の容量になります。
単相負荷も取り出せる!
さらにもう一つの利点として、単相出力を並行して取り出せるという特徴があります。
例えば、次のようなケースを考えましょう。
- 単相負荷として4kWを取り出したい場合
- 単相変圧器1台あたりの定格は10kW
このとき、単相側で4kWを使用すると、残りの容量は
10kW – 4kW = 6kW/台
となります。
3台分合わせると、動力用の容量は
6kW × 3台 = 18kW
となります。
もしここでもし1台故障してV結線運転に移行した場合、単相負荷を取り出しながらの動力出力は、
- 単相残容量:6kW/台
- V結線容量換算:(6kW × 2台) × (√3/2) ≈ 10.39kW
となります。
まとめ
項目 | 通常3台運転 | 1台故障時(V結線) |
---|---|---|
動力出力(単相負荷なし) | 30kW | 17.32kW |
動力出力(単相負荷4kW使用時) | 18kW | 10.39kW |
単相3台構成は、設置スペースや効率面で不利ですが、
- 1台故障時にも稼働を継続できる
- 単相と三相を同時に取り出せる
という、非常に現場寄りのメリットがあります。
「いざというときに止めたくない」「単相負荷も同時に取りたい」という場面では、まだまだ十分に選択肢になる構成です!
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