電気設備工事に欠かせない「ケーブルラック」ですが、材質や形状の選び方を間違えると、施工後に腐食や強度不足といった問題が発生する可能性があります。
本記事では、材質・形状・幅の決定方法、そして施工時の注意点についてわかりやすく解説します。
1. 材質の選定方法
スーパーダイマ
- 屋外でよく使用される亜鉛メッキ鋼板の一種。
- 耐候性があり、基本的には問題なく使用可能。
ただし注意点があります。
👉 酸性・アルカリ性の化学物質が存在する環境では腐食が進みやすく、原型が失われるほど劣化することもあります。
ステンレス
- 酸性やアルカリなどの腐食環境に強い。
- 腐食リスクが懸念される場合は、ステンレス製を選定するのが安全です。
2. 形状の選定(SRとQR)
ケーブルラックには主に SR形 と QR形 があります。
種類 | 高さ | 有効寸法 | 特徴 |
---|---|---|---|
SR | 70mm | 55mm | 一般的な用途で多用される |
QR | 100mm | 80mm | 強度が高く、収容力も大きい |
- CVT200mm²以上を使用する場合は、QRを選定しないと収まらないケースがあります。
- 支持点が長い場合や荷重が大きい場合も、強度のあるQRを選んだ方が安心です。
3. 幅の決定方法
ケーブルラックの幅は次のように計算します。
幅 ≒ 1.2 × { (ケーブル本数 × (ケーブル外径+10)) + 60 }
- 占有率は 32%以下 で検討します。
- 増設予定がなければ(ケーブル本数 × (ケーブル外径+10)) + 60(アース分)
- 弱電ケーブルを敷設する場合は、+150mm の余裕を持たせるとよいでしょう。強電との離隔は 100mm 必要だからです。
👉 実際の現場では将来の増設を見込んで、少し余裕を持たせて選定するのが一般的です。
4. 施工上の注意点
(1) 強電と弱電の離隔
- 100mm以上必要。
- セパレータを使用しC種アースを取ることが多い。
- 樹脂管などで接触しないよう保護すれば問題なし。
(2) ノイズ対策
- 大電流ケーブルと並行敷設する場合、ノイズが乗りやすいためシールドケーブルを推奨。
(3) 伸縮継手
- 30mごとに設置する必要あり。
- 支持物とケーブルラックの膨張率が異なるため、未設置だと歪みや建物にダメージを与える可能性があります。
(4) 固定方法
- 水平用・垂直用がある。
- 垂直方向では必ず「垂直用」を使用しないと、ケーブルラックの自重でずり下がる危険がある。
(5) 蓋(カバー)の固定
- 蓋と蓋のつなぎ目に抑え金具を使うのはNG。
- 基本的に 4点支持 を行う。
- 強風時、蓋が飛散しないように正しく固定することが重要。
- 垂直部分では垂直用を使用しないと飛散リスクが高いため注意が必要。
まとめ
ケーブルラックの選定では以下の点を押さえておくと安心です。
- 材質:環境によりスーパーダイマかステンレスを選ぶ
- 形状:SRとQRの違いを理解し、荷重やケーブルサイズに応じて選定
- 幅:計算式と占有率を基準に決定、弱電や増設を考慮
- 施工:離隔・ノイズ対策・伸縮継手・固定方法・蓋の取り付けに注意
現場でのトラブルを防ぐためにも、規格や施工基準を確認しながら選定・施工を行うことが大切です。
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