液化石油ガス(LPガス)は、プロパンやブタンを液体にしたものです。運送や貯蔵を効率的に行うために液化されていますが、そのままの液体状態ではガス機器で使用することはできません。
では、どうしているのでしょうか?
答えはシンプルで、自然に気化したガスのみを使用しているのです。
LPガス容器の種類とサイズ
LPガスは以下のような容器に充填され、使用場所や用途に応じて選ばれています。
- ボンベ容器(10kg、20kg、50kg)
- バルク貯槽(150kg、300kg、500kg、1000kg、2000kg、2400kg、2900kgなど)
バルク貯槽はバルクローリー車によって配送される大容量タイプで、主に業務用や工場向けに使われます。
必要なガス量や配送頻度に応じて、適切なサイズが選ばれます。
容器サイズ別の気化能力(参考値)
常温(約20℃)での気化能力は、以下の通りです。
一般ボンベ容器
容器サイズ | 気化能力(kcal/h) | 気化量(kg/h) | 備考 |
---|---|---|---|
10kg容器 | 約6,000〜7,000 | 0.25〜0.29 | 小規模コンロ用 |
20kg容器 | 約12,000〜14,000 | 0.50〜0.58 | 給湯器1台分程度 |
50kg容器 | 約30,000〜35,000 | 1.25〜1.46 | 一般家庭・中規模事業所 |
バルク貯槽(蒸発器なし)
容器サイズ | 気化能力(kg/h) | kcal換算(目安) | 備考 |
---|---|---|---|
500kg | 約20〜30 | 約170,000〜260,000 kcal/h | 横型バルク。気化器なしでも使用可能(条件あり) |
1000kg | 約35〜50 | 約300,000〜430,000 kcal/h | 大型設備向け |
※数値はあくまで目安。気温や残量、使用状況により変動します。
気化能力は変動する!注意すべきポイント
気化能力は、単純に「容器サイズが大きければ多い」というわけではありません。
以下のような要因によって大きく変動します。
外気温
気温が下がると、気化能力は大きく低下します。冬場は特に注意が必要です。
ガス残量
容器内のガスが少ない状態(50%以下)になると、気化能力も落ちます。
連続使用による冷却
長時間連続でガスを使用すると、容器自体が冷え、気化が追いつかなくなることがあります。
例:50kg容器だからといって、10kg容器の5倍持つとは限らないのです。
ベーパーライザー(蒸発器)の役割と必要性
大量のガスを使用する設備や、寒冷地では自然気化だけでは間に合いません。
その場合に使用されるのが**ベーパーライザー(強制気化装置)**です。
ベーパーライザーとは?
LPガスを加熱して強制的に気化させる装置です。
熱源としては以下のようなものがあります:
- 電気ヒーター式
- 温水循環式(ボイラー連動)
導入が必要なケース
- 工場設備や業務用厨房などで大量のガスを使用する場合
- 寒冷地や冬季
- 高圧で連続運転するようなガス機器を使う場合
まとめ|気化能力を理解して、安全・安定なLPガス利用を
LPガスは便利で高効率な燃料ですが、気化能力が安定しなければガス機器は正常に作動しません。
そのためには、
- 使用環境(温度)
- 容器サイズ
- 使用量
- 使用時間
をしっかりと把握したうえで、必要に応じてベーパーライザーなどの補助設備を検討することが重要です。
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