🔌 はじめに
高圧受電設備では、万一の故障時に設備を安全に遮断するために過電流保護が欠かせません。
300kVA以上の高圧設備では、**真空遮断器(VCB)と過電流継電器(OCR)**を組み合わせて保護するのが一般的です。
この記事では、OCRの仕組みやCT(変流器)の選定方法、試験時の注意点まで実務ベースでわかりやすく解説します。
⚙️ 300kVAを境に変わる保護方式
設備容量 | 保護機器の構成 |
---|---|
300kVA未満 | LBS(負荷開閉器)+ PF(限流ヒューズ) |
300kVA以上 | VCB(真空遮断器)+ OCR(過電流継電器)+ CT(変流器) |
300kVA以上では、より高精度な過電流検出と切り分け動作が求められるため、OCRとVCBによる保護が採用されます。
🔍 OCRはCTと組み合わせて使う
OCRは回路に直接流れる大電流を検出できないため、CT(変流器)を介して電流を監視します。
CTは一次側の大電流を、OCRが扱えるような5Aや1Aなどの標準的な二次電流に変換してくれます。
✔️ たとえば…
- 設備容量:300kVA
- 使用電圧:6600V
- → 三相電流:267A(=300×1000÷√3÷6600)
この場合、CT比は「300/5」が妥当です。
一次側267Aのとき、OCRには**4.45A(二次)**が入力されます。
🎯 過電流継電器(OCR)の設定方法
OCRは以下の3つの設定で構成されます:
項目 | 説明 | 例 |
---|---|---|
動作電流(感度電流) | 何Aで動作するか(CT二次基準) | 4A |
タイムレバー(TR) | 動作時間を決める目盛り | 10 |
瞬時要素(INST) | 瞬時に遮断するしきい値 | 10倍(=40A) |
⏱ OCRは2つのモードで動作
- 時限動作
設定電流(例:4A)を超えた場合、時間をかけて動作。
たとえば8Aで流れると、1秒程度で動作。 - 瞬時動作
大電流(例:40A)が流れたら、即(0.05秒以下)で遮断。
🔁 なぜ設定変更できるの?
これは電力会社との保護協調のためです。
故障時に、自分の設備側で先に遮断して波及事故を防ぐ必要があるため、OCRの設定値は指定または協議によって決定されます。
🧪 試験の際の注意点(CTT)
試験時には、**CTとOCRの間に設けたCTT(電流試験端子)**を利用してOCRの動作試験を行います。
⚠ 絶対NGな操作!
- CTが通電中に渡り線(短絡)を外すと、CTの二次側が開放状態になり、高電圧が発生。
- 絶縁破壊や感電事故の恐れあり!
👉 試験の際は、
- OCR側のみに試験電流を流す
「CTにヒューズを入れてはいけない」と言われるのもこのため。
万一開放になってしまうと危険なのです。
📝 まとめ:高圧設備の過電流保護はこう考える!
✅ 300kVA以上はVCB+OCR+CTの構成
✅ CTの選定は「一次電流に対して二次5Aまたは1Aが流れる比率」
✅ OCRの設定値は保護協調の観点から電力会社と協議
✅ 試験時にはCTTで試験
📌 補足:CT比と一次電流の早見表(6600V用)
設備容量(kVA) | 一次電流(A) | CT比の目安 |
---|---|---|
100 kVA | 約 87 A | 100/5 |
300 kVA | 約 263 A | 300/5 または 500/5 |
600 kVA | 約 525 A | 750/5 または 1000/5 |
1000 kVA | 約 875 A | 1000/5 または 1500/5 |
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