【電気設備の基礎】変圧器の容量と負荷の関係について
変圧器の容量単位は一般的に「kVA(キロボルトアンペア)」という皮相電力で表されます。一方で、建物や設備の負荷は「kW(キロワット)」という有効電力で記載されることが多く、これが混乱を招くポイントでもあります。
kVAとkWの違い
変圧器の容量と負荷の間には、以下の関係式が成り立ちます:
kVA = kW ÷ 力率
または
kW = kVA × 力率
ここで言う「力率(りきりつ)」とは、簡単に言えば電力の効率を示す値で、通常は0.8〜0.95程度が一般的です。
なぜ変圧器容量の80%以内が望ましいのか?
すべての負荷が同時に最大出力で稼働するケースは稀です。とはいえ、万が一の同時使用に備え、変圧器容量の80%以内に負荷を抑えておくことが、トラブル防止に繋がります。
最大需要電力の計算方法
実際には、全設備が常時稼働するわけではないため、需要率を考慮して最大需要電力を算出します。一般的な需要率は**約60%**です。
最大需要電力の目安式:
コピーする編集する設備容量 ÷ 力率(0.95) × 需要率(0.6)
この式により、現実的な最大電力を見積もることができます。
過負荷時のリスクと対策
変圧器が定格容量を超えて運転(過負荷)されると、内部温度が上昇し、絶縁劣化の原因になります。短時間であれば150%程度の過負荷にも耐えられる設計になっていますが、長期間の過負荷運転は変圧器寿命を大幅に短縮させてしまいます。
対策として:
- 二次側にサーマルリレー(温度接点)を設置
- サーマルリレーにより、異常温度時に警報を発報
- 警報の設定値は、
二次側定格電流 × 変流比(CT比)
これにより、過負荷による事故を未然に防ぐことができます。
まとめ
- 変圧器はkVA(皮相電力)、負荷はkW(有効電力)で表される
- 力率を考慮して、変圧器容量の80%以内の負荷が理想
- 最大電力は需要率60%で見積もる
- 過負荷対策としてサーマルリレーで警報管理を導入
安全で長寿命な電気設備運用のために、こうした基本的な考え方を押さえておくことが重要です。
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