太陽光発電設備では、Io(零相電流)による漏電検出が誤作動を引き起こすケースがあります。これは特にインバータ(PCS)を使用するシステムで顕著です。本記事では、こうした誤作動を防ぐための実践的な対策をまとめます。
1. 漏電遮断器の感度電流を適正に設定する
太陽光発電設備では、正常な状態でもIo電流が流れることがあります。そのため、漏電遮断器の感度電流を通常よりも高めに設定する必要があります。
- 複数台のPCSを使用する場合:主幹に設ける漏電遮断器は、台数分の漏れ電流を合算する必要があるため、感度電流が非常に大きくなってしまいます。
- 推奨される方式:PCSごとに個別の回路を設け、各回路に適切な感度電流の漏電遮断器を設置することが望ましいです。
2. 絶縁監視装置の検出方式の変更
Io検出による誤発報を抑制するために、絶縁監視装置の検出方式を以下のように変更するのも有効です。
- 変更前:Io方式
- 変更後:Ior方式(不平衡電流方式)
これにより、正常な交差するIo電流を避けて、実際の漏電をより正確に検出できるようになります。
3. 電路に変圧器を設ける
変圧器を設置することで、漏電電流が変圧器の二次側に閉じるようになります。これにより、一次側(受電設備側)には漏電電流が流れず、誤動作を防ぐことができます。
- **トランスレス方式のPCS(インバータ)**の場合は、特に変圧器の設置が効果的です。
4. アース方式の工夫(トランス内蔵方式のPCS)
トランスを内蔵するPCSの場合、アース方式にも工夫が必要です。
- C種もしくはD種接地を単独で設置することで、他の接地系統との干渉を防ぎ、安定した運用が可能となります。
5. 高周波成分による漏れ電流対策
太陽光発電システムでは、インバータのスイッチングにより高周波成分を含む漏れ電流が発生しやすくなります。
対策例:零相リアクトルの設置
- 零相リアクトルは、周波数が高くなるとリアクタンスが増す性質を利用し、高周波成分を熱に変換して除去することができます。
- ただし、
- 本来流れるべき電流にも影響を与えるため、効率が若干低下します。
- リアクトル自体が加熱するため、放熱対策や設置場所に注意が必要です。
- 選定や設計が難しいため、専門的な知識が求められます。
ノイズフィルターの活用
通信機器で使われる小型のノイズフィルターを応用することで、一定の高周波漏れ電流を低減する効果も期待できます。
まとめ
太陽光発電システムの信頼性を高めるためには、漏電検知に関わる誤動作のリスクを抑えることが重要です。本記事で紹介した対策を組み合わせることで、より安定した運用が可能となります。
- 感度電流の適正化と個別設置
- Ior方式への切り替え
- 変圧器設置による絶縁
- 適切なアース工事
- 高周波成分除去対策(リアクトル、フィルター)
現場の状況に応じて最適な手法を選定することが求められます。
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