電気設備に携わる方にとって、「PAS(Pole mounted Air insulated Switch:柱上気中負荷開閉器)」や「SOG」という言葉はおなじみかもしれません。しかし、具体的な機能や選定時のポイントを正しく理解しているかどうかは、非常に重要です。本記事では、PASおよびSOG機能の基本的な役割から機種選定の注意点までを詳しく解説します。
PAS(柱上気中負荷開閉器)とは?
PASは、高圧配電設備において電力会社と需要家の責任分界点に設置される開閉器です。主な目的は波及事故の防止で、事故時に影響を最小限に留める役割を担います。
SOGとは?2つの重要な保護機能
PASには「SOG機能」が搭載されることが一般的です。これは以下の2つの保護機能を指します。
① SO機能(短絡・事故電流検出)
開閉器自体は短絡電流の遮断機能を持ちませんが、SO機能により大電流が流れた際にロック状態を保持。電力会社側の継電器が動作し、負荷が遮断されたタイミングで開閉器を開くことで、波及事故を最小限します。
② G機能(地絡電流検出)
高圧側の地絡(漏電)を検出し、自動で開放することで波及事故を未然に防ぎます。
PAS更新の目安と重要性
SOG機能は非常に重要な保護機能であり、万が一故障すれば大規模な波及事故につながりかねません。そのため、更新推奨時期は10年が目安とされており、優先的な更新が求められます。
PASの選定ポイント
1. 定格電流と短絡電流
- 定格電流はトランスの合計容量などを基準に選定。
- 短絡電流は変電所に近いほど大きくなるため電力会社に確認、過電流耐性も要確認。
2. 地絡電流検出方式(方向性 or 無方向)
- 方向性あり:電圧要素を用いて、漏電がどちら側かを判断して開閉。ケーブル長が40mを超える場合に推奨。
- 無方向:構成がシンプルでコスト低減可能だが、誤動作の可能性が高くなるケースも。
3. VT(電圧トランス)機能
- 内蔵型:PAS内部に電源トランスを持ち、外部配線が不要。断線・誤操作のリスクが低くおすすめ。
- 外部電源型:安価だが、ブレーカー入れ忘れや配線劣化による機能喪失に注意。
※内蔵型VTでは試験時に「三相一括耐圧試験」を行う必要があり、誤った試験方法では機器破損のリスクがあるため注意が必要です。
避雷器(LA)の設置について
- 500kVA以上の需要家には設置義務あり。
- 雷の多い地域や山間部などでは、500kVA未満でも設置を推奨。
- 接地線の種別・太さの選定にも注意が必要。
地域別仕様の注意点(例:東京電力)
東京電力管内ではケーブル長が長い仕様があり、それに対応したPASを選定する必要があります。地域ごとの仕様書や設置環境に合わせて選ぶことが重要です。
まとめ
PASやSOG機能は、波及事故防止に不可欠な装置です。特に10年を目安にした更新や、設置環境に応じた正確な機種選定が非常に重要です。電力設備の信頼性を高め、トラブルを未然に防ぐためにも、これらの知識を押さえておきましょう。
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